この度、ロイター通信社よりジャパニーズウイスキーに関する取材を受け、全世界向けに記事と映像が配信されましたのでお知らせ致します。
1.ロイター通信社とは
世界最大級の情報プロバイダー企業で、 金融関連情報をはじめ、ヘルスケア、法律、税務会計等のプロフェッショナル向け情報を提供している通信社。 世界約100ヵ国の700以上のメディアへ情報配信しています。
2.配信された記事と映像
今回、ロイター通信社よりお問合せを頂き、ジャパニーズウイスキーに関する取材とお店の様子を撮影させて欲しいというものでした。
取材では、いくつかの質問をインタビュー形式でお話させて頂きました。
(画像出展:Japanese whisky turns 100 as craft distilleries transform industry | Reuters)
実際に全世界へ配信された記事と映像は、こちらからご覧ください。
記事のタイトルが、「Japanese whisky turns 100 as craft distilleries transform industry(ジャパニーズ・ウイスキーが100周年を迎え、クラフト蒸溜所が業界に変革をもたらす)」という事で、記事や映像中では、静岡蒸溜所とサントリー山崎蒸留所に特にフォーカスされています。
BAR新海へのインタビューに関しては、実際にBARに来られるお客様におけるジャパニーズウイスキーに関する興味や関心、またジャパニーズウイスキーの近年の動向についてもお話させて頂きました。
3.記事の詳細について
今回配信された記事及び映像に関して、私達にとっても非常に興味深いものでした。
これまでの日本のウイスキーの歩みと、現在の日本のウイスキーの変革と未来についてまとめられていますので紹介させて頂きます。
ジャパニーズウイスキーが100周年を迎えた
SHIZUOKA CITY, Japan, Nov 21 (Reuters) – In a still fuelled by cedar from nearby forests, Shizuoka Distillery, a leader in Japan’s new wave of independent whisky makers, crafts its spirits to tap into surging global demand.
This year marks the 100 year anniversary of whisky making in Japan since the founding of market leader Suntory’s first distillery in Yamazaki in 1923.
And at the century mark, there are now more than 100 licensed distilleries in the country – twice as much as 10 years ago – with each one vying to make its mark in a rapidly expanding market.
(引用:Japanese whisky turns 100 as craft distilleries transform industry | Reuters)
(訳)
11月21日、静岡県静岡市(ロイター) – 近隣の森林から伐採したスギを燃料とする蒸留器で、日本の独立系ウイスキーメーカーの新潮流をリードする静岡蒸溜所は、急増する世界的な需要を取り込むべくウイスキーを製造している。
1923年にマーケットリーダーであるサントリーが山崎に最初の蒸溜所を設立して以来、今年は日本におけるウイスキー製造の100周年にあたる。
この100年という節目に、日本では現在100を超える蒸留所が認可されており、これは10年前の2倍にあたる。
まさに、今年2023年はサントリー山崎蒸留所が操業して100年を迎えました。業界を牽引してきたのは間違いなくサントリーであると私達も同じように認識しています。
10年前の2013年の日本のウイスキー蒸溜所の数は、1.山崎蒸溜所、2.白州蒸溜所、3.知多蒸溜所、4.余市蒸溜所、5.宮城峡蒸留所、6.キリン富士御殿場蒸溜所、7.秩父蒸溜所、8.マルス信州蒸溜所と記憶しており、記事中の「日本では現在100を超える蒸留所が認可されており、これは10年前の2倍にあたる。」は、10年前の約10倍にあたる。が正しいのではないかと思います。
小規模でも世界レベルの野心(静岡蒸溜所)
The cedar fire – which Shizuoka claims is the world’s only wood fuelled blaze beneath a whisky still – is one of several novelties these distilleries are using to set themselves apart.
And even though their businesses are small compared to drinks giants like Suntory, their ambitions are world-class.
Taiko Nakamura, 54, was inspired to set up Shizuoka Distillery in 2016 by a trip to Scotland.
“I saw this distillery, and I was amazed that this tiny place in the mountainous countryside was selling whisky across the globe,” he said. “So I thought it would be fun to make my own whisky and then have people from all over the world enjoy it.”
(引用:Japanese whisky turns 100 as craft distilleries transform industry | Reuters)
(訳)
静岡蒸溜所は、ウイスキースチルの下で薪を燃やしているのは世界でもここだけだと主張しているが、杉の火は、これらの蒸溜所が他とは一線を画すために使っている斬新な演出のひとつである。
サントリーのような巨大な酒類メーカーに比べれば、彼らの事業は小規模だが、その野心は世界レベルだ。
中村 大航(54歳)は2016年、スコットランドへの旅行が静岡蒸溜所設立のきっかけとなった。
「この蒸溜所を見て、こんな山奥の小さな場所でウイスキーが世界中で売られていることに驚きました。だから、自分でウイスキーを作って、世界中の人たちに楽しんでもらえたら楽しいだろうなと思ったんだ」
私達「BAR新海」へ取材にこられた時には、既に静岡蒸溜所の取材が行われた後だったようです。
静岡蒸溜所の中村 大航氏が、家業である精密部品の会社の社長だった頃に、スコットランドのキルホーマン蒸留所を訪問した時に感じた事が静岡蒸溜所を設立するきっかけになったというエピソードがあります。
量より質、高騰する価値
The explosion of craft whisky in Japan follows a boom and bust in the industry.
QUALITY OVER QUANTITY
Long viewed as an inferior copycat of Scotch, Japanese single malts and blended whiskies started racking up international awards around 2008, sparking intense global demand that effectively drank the supply dry by around 2015.
The shortage sent prices into the stratosphere. A set of 54 bottles from Ichiro’s Malt, a trailblazer in Japanese craft whisky, sold for $1.5 million in 2020 at a Hong Kong auction. Last week, Sotheby’s offered what it claimed was the most valuable collection of Japanese whisky at auction, headlined by a 52-year old bottle that sold for 300,000 pounds ($373,830).
(引用:Japanese whisky turns 100 as craft distilleries transform industry | Reuters)
(訳)
日本におけるクラフトウイスキーの爆発的な普及は、業界の好況と不況の後を追ったものである。
量より質
長らくスコッチの模倣品と見なされてきた日本のシングルモルトやブレンデッドウイスキーは、2008年頃から国際的な賞を量産し始め、2015年頃には世界的な旺盛な需要に火をつけて供給を実質的に枯渇させた。
供給不足により、価格は成層圏に突入した。日本のクラフトウイスキーの先駆者であるイチローズ・モルトの54本セットは、2020年に香港のオークションで150万ドルで落札された。先週、サザビーズはオークションで最も価値のあるジャパニーズ・ウイスキー・コレクションを出品し、52年もののボトルが30万ポンド(373,830ドル)で落札された。
イチローズモルトのカードシリーズ54本セットが香港のオークションにて約1億円で落札されたニュースは、まだ記憶に新しいと思いますが、その後日本でもカードシリーズ58本セットがオークションに出品され、同じく1億円で落札されています。
11/17にロンドンのオークションサザビーズでは、「軽井沢1960年」が30万ポンド(約5600万円)で落札されました。
近年、市場に流通している「軽井沢」ブランドのウイスキーは、当時メルシャンが運営していた軽井沢蒸留所で製造されたものであるが、蒸溜所はウイスキー不況時期に製造を中止し、貯蔵庫に残された熟成中の原酒はイギリスの某企業に買い取られた。年月を経て「軽井沢」ブランドとして商品化され、皮肉にも世界中で高い評価を得るという結果となっています。
大手メーカーの動向
Major makers Suntory and Nikka, a unit of beer maker Asahi Group (2502.T), have spent the past decade ramping up capacity and stock of the spirit, which must age for at least three years to qualify as “Japanese whisky,” under 2021 standards.
Suntory, Japan’s biggest and best-known whisky maker, recently invested 10 billion yen ($67 million) to upgrade its distilleries, including its Yamazaki site.
Chief blender Shinji Fukuyo said he welcomes the new breed of Japanese distillers, and Suntory is willing to give advice to the startups “as long as it contributes to maintaining and improving the quality of Japanese whisky as a whole”.
(引用:Japanese whisky turns 100 as craft distilleries transform industry | Reuters)
(訳)
大手メーカーのサントリーとビールメーカー、アサヒグループ(2502.T)傘下のニッカは、2021年の基準で「ジャパニーズ・ウイスキー」として認定されるには少なくとも3年間熟成させなければならない蒸留酒の生産能力と在庫を過去10年間増強してきた。
日本最大で最も有名なウイスキーメーカーであるサントリーは、最近、山崎工場を含む蒸留所の改良に100億円(6700万ドル)を投資した。
チーフブレンダーの福與伸二氏は、日本の新しいタイプの蒸留所を歓迎し、サントリーは「日本のウイスキー全体の品質の維持・向上に貢献するのであれば、新興企業に助言を惜しまない」と語った。
サントリーもニッカも、ウイスキー不況時期に生産量を減らしていた為、2010年頃からのウイスキー需要高騰に十分に供給する為の原酒が枯渇してしまったと言われています。
両社とも、生産量の強化と製造設備への投資を行ってきましたが、ウイスキーは蒸溜後すぐに出荷できるものではなく、3年以上の熟成期間を経て商品化となる為、市場への供給量が賄われるのはまだまだ先になるでしょう。
また、サントリー福與伸二氏の「新興企業に助言を惜しまない」の言葉には感動します。サントリーという企業の利益だけでなく、業界全体を高めていこうという姿勢に尊敬の念を抱きます。
クラフト蒸留所の動向
Foreign money is flowing into the market too. In 2021, global drinks giant Diageo bought an undisclosed stake in Komasa Kanosuke Distillery, established in 2017 by a maker of traditional shochu liquor.
IJW Whiskey Company, a Kentucky-based company, set up a Japanese subsidiary known as Cedarfield that is building a distillery on the northern island of Hokkaido that would be Japan’s biggest, the Nikkei newspaper reported in March.
A Cedarfield representative declined to comment on the company’s plans.
But with new supply hitting the market and from so many new players, some in the industry have voiced concerns that poor quality product could spoil Japan’s reputation.
“That’s a real fear in the industry,” said Casey Wahl, an American expatriate who founded Kamui Whisky on the remote island of Rishiri in Japan’s extreme northern boundary.
Shizuoka’s Nakamura says makers like him can only respect the process and wait for the results.
“I believe we need to put all our effort into making Japanese whisky that lives up to the quality of the Japanese whiskies made by our predecessors,” he said.
(引用:Japanese whisky turns 100 as craft distilleries transform industry | Reuters)
(訳)
海外からの資金も市場に流入している。2021年、世界的な酒類大手ディアジオは、伝統的な焼酎メーカーが2017年に設立した小正嘉之助蒸溜所の非公開株式を購入した。
ケンタッキー州を拠点とするIJWウイスキー・カンパニーは、北海道に日本最大となる蒸留所を建設する日本法人「シダーフィールド」を設立したと、日本経済新聞が3月に報じた。
シダーフィールド社の担当者は同社の計画についてコメントを避けた。
しかし、多くの新規参入業者から新たな供給が市場に出回る中、業界内では、質の悪い製品が日本の評判を落とすかもしれないという懸念の声も上がっている。
日本の最北端に位置する離島、利尻島でカムイウイスキーを創業したアメリカ人のケイシー・ウォール氏は、「それは業界にとって本当に怖いことです」と語る。
静岡の中村氏は、彼のようなメーカーはプロセスを尊重し、結果を待つしかないと言う。
「先人たちがつくったジャパニーズ・ウイスキーの品質に恥じないジャパニーズ・ウイスキーづくりに全力を注ぐ必要があると思います」と彼は言う。
ジャパニーズウイスキーを牽引してきた大手サントリー、ニッカが2008年以降世界的なコンペティションで数々の賞を量産してきた功績が、今日のジャパニーズウイスキーの世界的な需要高騰に繋がっている事は言うまでもありません。
しかし、この需要高騰に便乗して暴利を貪る事業者が現れ、粗悪なフェイクウイスキーを大量に販売している事も事実です。
先人達によって築き上げられたジャパニーズウイスキーの品質と価値が、そのような事業者よって毀損されないよう、私達バーテンダーが出来る事は、「お客様へ、日本のウイスキーの素晴らしさを正確に伝える事」に尽きると考えております。
「BAR新海」では、粗悪なフェイクウイスキーは一切扱っておりません。造り手の皆様が情熱を注いで造る「正統派ジャパニーズウイスキー」のみ取り揃えております。
今後も、私達はジャパニーズウイスキーの価値と認知の向上に少しでも役に立てるよう取り組んで参ります。